時を遡ること、数時間前。魔法使い兼小説家であるノワールの家に居候させてもらっているメルキュールは、誰かに体を揺さぶられて目を覚ました。

「メルキュールさん!大変なことになっているんです!起きてください!」

体を揺さぶっていたのは居候仲間のシャルロットだった。いつになく慌てており、メルキュールは飛び起きる。

「シャルロット、どうしたの?」

メルキュールが訊ねると、シャルロットは「実は、ノワールさんがいないんです」と答える。ノワールの兄リオンや居候仲間のエリカやカズが探してもどこにもノワールの姿はなく、ノワールの部屋のベッドの上には誰が書いたのかわからない本が置かれていたそうだ。

「すぐに着替えてリビングに行くよ!」

メルキュールがそう言い、シャルロッテは「わかりました。そう伝えます」とお辞儀をして部屋を出て行く。それを見届けてから、メルキュールは着替え始めた。

昨日の夜は、メルキュールにとって予想していなかった出来事が起きたため、なかなか眠れなかった。やっと眠れたと思ったらノワールが行方不明とは、休む暇などない。