僕に声をかけた人たちは、僕を見て戸惑ったような顔を見せる。えっ?何?僕の知り合いなの?じゃあ、どうして僕は思い出せないの?

目の前にいる人たちの気持ちが伝染して、不安がさらに大きくなる。それを水色の髪の人がハッとした目で見つめ、残りの四人に言う。

「あったから物の怪の気配がする。二人きりにさせて」

水色の髪の人たち以外の人は、みんな「でも……!」と言っていたけど、水色の髪の人が「お願い!」と真剣な目をすると渋々どこかへと走っていった。

水色の髪の人は、僕をジッと見つめる。怖い、すごく怖い……。

「多分、無理やりこの小説の中に閉じ込められたから、ショックで記憶が消えてしまったんだね。記憶が消えてしまうことがあるって物の怪から教えてもらったから……」

「えっと、何の話を……?」

ノワールという人物と関係があるのかな?そう思っていると、フッと水色の髪の人は微笑んだ。あれ?この笑い方、どこか懐かしい?