「何となく。」って何だよ。
あの様子だと、昨日のことは覚えてないな。

俺の一世一代の勇気と我慢をどうしてくれるんだよ。
まったく、あいつには敵わないな。

昨日の夜の優香はとても可愛かった。

あいつが誰よりも頑張ってるのは前から知っていたし、誰よりも人を思いやれる奴だってことも、もちろん知っていた。

いつも、一つの仕事が終わると、どんな風にお客さんが喜んでくれたかを嬉しそうに俺に話してくれる優香を見るのが、俺は嬉しかった。

だから、同期として支えたいと思っていたし、ずっと仕事も一緒にしていたいと思っていた。

でも、『同期として』って言うのは、俺が臆病だったからなんだって、長期出張に出て初めて気付いた。

今まで、彼女がいたこともあるし、それを優香に話したこともある。

地方での生活は嫌じゃなかったけど、ただそこに優香がいないことが寂しかった。

優香が近くにいることが当たり前過ぎた。

たまに一緒に飲んで愚痴を言い合ったり、仕事の相談をしたり、あいつの嬉しそうな顔を見たりすることが、俺にとっては日常のかけがえのない幸せだったんだ。