「どうした?ボゥっとして。あいつら、今からコンパだって。」

後ろから、同期の竹内君が声をかけて来た。

「あれっ、久しぶり。長期出張じゃなかったの?」

「今日、帰って来た。今は休む暇なんてないから。」

「竹内君も大変だね。」

「野崎は?」

「私はクライアントとの打合せから戻ったところ。」

「そっか、打合せは上手くいった?あの劇場のリニューアルだろ。社内でも噂になってたよ、野崎が頑張ってるって。」

「ありがとう。藤田さんのおかげで上手くいったよ。」

「で、藤田さんは?」

「愛しい家族のもとへ帰って行った。」

「家庭を持つと大変だな。家族サービスもしなきゃならないし。」

「そうだね。独身女の私は、仕事に没頭できて幸せだね。」

「それも寂しい話だな。お互い様だけど。」

二人で笑い合う。 

「野崎、この後の予定は?仕事、何時頃に終わり
そう?」

「うーん、8時ごろかな。」 

「じゃあ、仕事終わったら、たまには飲みに行こうぜ。俺、奢るから。」

「マジで?やった。奢りなら行く!」

「現金な奴だな。じゃあ、後でな。」

竹内君は、設計部のエースだ。
今も、地方都市の新しくオープンする大きなショッピングモールのプロジェクトに関わっていて、最近はずっと、そっちに行っていた。

同期だから気軽に話ができるし、仕事面でもプライベートでも、色々、相談に乗ってもらっていたから、今回、竹内君が東京にいないのは、私には結構プレッシャーもあった。

だから、思いがけず会えて、私のテンションは自然と上がる。
この後、竹内君と久しぶりに飲めるなら、今日はまだ頑張れそうだ。

デスクに戻る足取りが軽くなった。