とある居酒屋の個室にて、アルバイトのメンバーと共に飲み会を開いていた。

 主催してくれたのは優希くんで、私の隣に座っている。


「九条さん、最近は相手と上手くいっていそうだね」

 騒がしい個室内でお酒と料理を楽しんでいると、優希くんに声をかけられる。

 相手とは、恐らく郁也さんのことだろうけれど──


「上手くいってなんかいませんよ」

 それは絶対にあり得ないと思い、即座に否定する。
 確かに夫婦で過ごす時間は増えたけれど、未だに郁也さんの考えていることはわからない。


 この間なんてソファで寝落ちした後、次に目が覚めた時には郁也さんと同じベッドで寝ていた上、抱きしめられていたのだ。

 あの時は本当に驚いた。
 悲鳴にも近い叫び声を上げ、郁也さんを無理矢理起こして状況の説明を求めたものだ。


 郁也さんは、厚意で私をベッドまで運び、寂しそうにしていたから一緒に寝てやったと言われたけれど、いた私が寂しそうにしていたというのだ。

 寝言で寂しいと口にしていたと言われたけれど、郁也さんの言い訳だと思うことにした。


 たとえ本当に寝言で寂しいと言っていたとしても、それを本心だと思って一緒のベッドに寝るのもどうかと思う。

 彼には他に愛している人がいるくせに。