二人で同じベッドに寝た日、私たちはいくつか話をした。

 まずは家事の役割分担を決め、お風呂掃除と洗い物、ゴミ出し、トイレ掃除は郁也さんが担当し、料理と洗濯物、リビング等の掃除が私の担当となった。


 郁也さんに任せすぎではと思ったけれど、料理が一番負担が大きいと言われ、こうなったのである。

 何気なく『料理ができないんですか』と尋ねてみれば、彼は言葉を詰まらせながらも『お前の料理が口に合うから』と返された。


 素直に美味しいからと言えばいいのにと思いつつ、遠回しに美味しいと言われ、嫌な気持ちになるわけがなかった。

 それともう一つ、週に一度は二人で買い物に行くことにした。


 今はまだ大丈夫だけれど、近所の人たちに本当に夫婦かと怪しまれては困るため、近くのスーパーに買い物へ行くにしても二人で行くことにした。

 一応郁也さんに、『女の人を家に呼ぶ時は周りに気をつけてくださいね』と忠告しておいた。


 万が一、ご近所さんに見られたら……と思うと、浮気夫とそれを黙認する妻、二人は仮面夫婦という噂が流れ、そのうち親たちの耳にも入るかもしれない。

 
「郁也さん、おはようございます」
「……ああ」


 一週間後。
 私たちの生活は大きく変わった。

 何より、郁也さんが地下からリビングに顔を出すようになったのだ。