病院に来るのはこれで何度目だろうか。


相変わらずおしゃれな院内だけど、この建物の中では今日も誰かが死んでいるのだ。


前に教えてもらった4階の病室へ迷わず向かうと、愛子が額に脂汗を浮かべていた。


一見して様子がおかしいことはわかった。


しかし、見舞客はおらず、看護師たちも異変に気がついていない状態だった。


「どうしたの愛子?」


あたしはベッドに近づいて声をかけた。


あたしの顔を見た瞬間、愛子の顔に恐怖が浮かんできた。


こんな状況でもあたしたちの存在は愛子にとって怖いものなのだと思い、笑ってしまいそうになった。


それほど怖いくせに、どうしてあたしたちのことをイジメていたのだろう。


「胸が……」


愛子はそれでも懸命に訴えた。


両手で胸を抑え、喘ぐようにあたしと夢を見つめる。


あたしたちならすぐに愛子を助けることができる。


前回と同じようにベッドから落ちてしまったナースコールを押すことだってできる。


でも……。


「なんで、あんなことをしたの?」


夢が一歩ベッドに近づき、愛子へ向けてそう聞いた。


愛子は目に涙を浮かべて「ごめんなさい……」と、呟いた。