「……夏休みは、この西高生として品位のある行動を心がけー……」

一学期の終業式。
壇上であいさつをする岸会長を遠くからながめる。

(……やっぱり、かっこいい)

低く深い声が、体育館中に響き渡る。
いつもすぐ近くで聞いているのに、また違った感覚のような気がする。

わたしの、好きな人の声だ。

こっそりにやけていると、隣のクラスの女子がヒソヒソ話をしているのが聞こえてくる。
会長の声に集中したいのに! なんて思うと、そのヒソヒソ話につい気を取られてしまって……。

「……ねぇ、やっぱりかっこよくない?」
「たしかに、いいかも」
「でしょ?」

チラリとそっちを見ると、彼女たちが話しながら指差しているのは、……ステージの上。
(え? まさか)

「ほんと、イケボだよねぇ、会長」
(‼︎)

話の内容は岸会長のことで、しかもすごく褒められていて。

「声優さんみたいだね」

「……でも、よく見ると顔もカッコ良さげな気がするんだよね。メガネに隠れてるだけで」

「ほんと? あ、でも全体的にシュッとしてるよね」

「今度、すれ違ったりしたら、よく見てみようよ」

(やばい……!)
会長は別にわたしのものではないのに、何がやばいのか。
図々しいことを考えてるってわかってはいるけど、背中にイヤな汗が流れる。

そう、岸会長、よく見たらカッコいいんです。
それを知ってるのは、会長と関わりの深いクラスメイトの先輩たちとか、生徒会のメンバーとか……

「会長、全校生からモテちゃうんじゃないのー?」
「えっ」

後ろに立っていたアキが、わたしの耳元で意地悪そうにそう言った。