「絶対にかなわない、人気者の先輩とのラブストーリー?」

わたしが差し出したノートを読んで、アキもミナミも首をかしげた。

「ちょっとありがちじゃない?」

「うん、モテモテ男子がなぜか地味女子の主人公にも優しいパターンでしょ?」

テストが終わったら本格的に投稿用の漫画を描こう、と約束していたわたしたち。
まずはストーリーを作るわたしの役目、ということで家で考えてきた話をノートにまとめてきた。
今は昼休みにそれを二人に見てもらっているところ。

「……それがね、違うんだよ。その先輩は、主人公にだけめっちゃ冷たいの! 塩対応! 主人公も最初は反発してるんだけど、だんだん好きになっちゃって、振り向かせるためにいろいろなことを頑張って成長していく、っていう……」

そこまで説明して、アキがニヤニヤしていることに気づいた。

「な、なに?」
「なにって、これ、陽菜子と生徒会長のことじゃん」
「!」

た、たしかにこの先輩の塩対応は岸会長をモデルにした部分も少し……いや、けっこう……あるけど。

「陽菜子ちゃん、すごく恋してるんだね」
ミナミの言葉に、顔が熱くなる。

「お、ついに認めるか?」

「好きになっちゃったんだよね……?」

二人同時に見つめられて、なんだかもう、逃げ場がないみたいに感じて。
こくん、とうなずくと、二人はきゃーって盛り上がった。