(き、緊張する……、帰りたい……)

会長とはじめて出会った図書室で、机を挟んで向かい合う。
勉強会は早くもその週の週末に行われることになった。
放課後、軽く雑務を終えた帰りに二人で図書室にやってきたのだ。

あのときと同じく、図書室には図書委員の人が座っているだけで、静かすぎるのが余計に緊張感をふくらませる。
カバンから筆記用具を出す岸会長をのぞき見ると、視線を上げた会長と目が合ってしまった。

「なんだよ、じっと見て」
「い、いや……見てません」
「まあいい、さっさとやるぞ。教科書出して」

時間がない、と私を急かす岸会長は、よっぽど私の頭が悪いと思っているらしい(実際に悪いけど)。
今は六月だから、もしも生徒会選挙に出るなら残り約三ヶ月。
間に合うわけない、と弱音を吐いた私に、「間に合わせるんだよ」と会長は言った。


……男子と、二人きりで勉強。
それだけでもう不思議なのに、それは三年生の先輩で、しかも生徒会長で。

「なんか不思議な感じ……」
「俺からしたら、なんで百七十二位なんて取れるのかの方が不思議だよ」
「⁉︎ なんでそれを⁉︎」
「生徒会の情報力だ」

あわてる私を見て、岸会長は面白そうに笑った。
……会長、普通に笑うんだ。