「えー、それチャンスだったじゃん! 陽菜子、入ってよ生徒会!」
「そんな……嫌だよ、できるわけない」

次の日、岸会長たちとのことをアキとミナミに報告すると、二人とも興奮した様子で騒ぎ始めた。

「陽菜子、意外としっかりしてるから向いてるかもよ? しかもイケボの岸会長とお近づきになれる、大イベント!」
「いや、だから岸会長は……」

言いかけて、やめる。
二人に「岸会長は性格が悪かった」って教えたけど、あそこまで腹黒い、ということはいまいち伝わらなかったんだ。

「そんなに言うなら、アキかミナミが生徒会入ればいいじゃん〜……」
「わたしらはいいよぉ。あ、わたし、実は推薦狙うから勉強もそこそこにやりたいんだ」

アキの家は母子家庭だから、特待生の推薦が欲しい事情もうなずける。
そして、ミナミは極度の人見知り。
確かに生徒会は向いてないかもしれないけど……。

「……わたし一人って、やっぱ無理だよ」
「ごめんごめん、大人しく別の方法を考えるか」

わたしが深刻な表情をしたからか、アキもミナミも諦めたように笑った。
とは言え、正直どん詰まり状態だ。
コンクールは間に合わない、新入部員は期待できない。残された方法なんてー……。

【ピンポンパンポン】

わたしたち三人のため息と、校内放送の呼び出し音が重なった。
どうせ、先生の呼び出しか何かだろうと思っていると。

【一年三組、橋本陽菜子さん。本日放課後、十六時に生徒会室に来てください。繰り返します……】

「……へ?」

教室中の視線が、一気にわたしに集まる。
こうしている間も、放送では繰り返し、わたしの名前が呼ばれた。

……この声の主は、まさか。
(き、岸会長……⁉︎)

「ちょっと陽菜子、これって……」
「……わたし、今日、早退してもいいかな」

イヤな汗が止まらなくて、今すぐにでも逃げ出したかったけれど、やっぱりそんな勇気すら出なかった。