そもそも、あの古代魔法陣は
肉体という器を霧散させ、
魂と意識だけの思念体にする
ゲートだ。

「おぬし、喩え首が、もげたと
しても何ら問題もなかろうて。」

如何にも、ふおっふおっふぉっ!
とか ナンチャラマスターが
笑いそうな風体で、
大師は マイケルに不穏な台詞を
吐いて、
手の金剛杖で、マイケルの頭を
コツンとする。

「あだっ!!って!言われてね、
ハイハイそうですかとか、
直ぐには頭が追い付かないの!」

マイケルは頭を撫でた後、
自分の首を そろそろと擦る。

どうやら首はくっついたらしい。
見れば、血飛沫で赤塗りになった
宰相女官服は、さっきの
大師がマイケルにしたコツンで、
すっかり綺麗に
戻っている、らしい。

「この空間は思念の間じゃと、
話ただろうに、慣れてもらわ
ねばなぁ。よいわ、あの扉への」

見れば、大師の頭には
笠は消え、替わって
白い手拭いが独特の宝冠括りに
変化したのを 被っている。

まさに仙人の様相になった大師の
後ろを、マイケルが疑いなく
続く。何故なら、
すでに知っている空間で。

初めて大師に連れて来られた
闇の廊下だからね。ここ、、

そう 思って
マイケルは ふいっと
前にも後ろにも続く空間を
確認する。

音もなく進む黒い中、
両側に只、木製のアーチ扉が
並ぶ場所。
その扉の1つが 勝手に開いて、
大師がそこを潜る。

それは、初めての時と同様に。

マイケルも、そのまま付いて中に
入ると、勝手に扉は閉じた。

これも、初めてと同様に。


「あー!ここ!やっぱり最初に
きた部屋だわ!懐かしいー。」

マイケルはキョロキョロして、
部屋の中を見回す。

部屋中は 広くどこか、
ラボのような作りで、ボンヤリと
夜行虫灯りが 虹色に点いている。

中央には、
ラボとは 合わない
アンティークの円卓に、
円形古地図が
マッピングみたいに立体投影
され、
よく見ると 中は半透明で精密な
ジオラマになっている。

「これが、さっきまでいた、
調整世界なんてねぇ。凄いねぇ」

マイケルは、ジオラマを
覗いて 強がりな声を
わざとらしく、大師に投げた。

マイケルはもう、
充分知っている 。
この ジオラマは生きて
動いている 人の姿まであるわけで

「でわな、時が余り無いからの、
マイケルの思念をポータルに、
ウーリューウ藩島のエネルギー
を、空蝉の魔法陣にかけ、
銀河大陸に変換投下をするぞ」

さあ、マイケルここへと、
大師は マイケルの声に
気が付かない振りをして

先を促す。

大師に呼ばれて、マイケルは
ゴクリと息を飲んだ。

マジ、いよいよだ。

「よいか?マイケル。これより、
おぬしの思念体をスキャン
しながら変換投下をする。刹那
ではあるが、スキャンされる
おぬしの体感は、やり直しの
負荷があるじゃろう。心せよ」

そう大師がマイケルに告げて、
両の手を胸に、印を結ぶ。

※~※゜※Oṃ vajraratna,~**゜”~
゛Oṃ trāḥ svāhā※*~”

大師の詠唱に 呼応して

**※~Namo Ākāśagarbhāya~Oṃ ~*ali kalmali mauli svāhā~**゜

ジオラマの虚空に、
マイケル思念身体が横たえて
浮遊すると、
天空から シャンデリアのような
クリスタのジオラマが 双璧して
出現する。

※~※゜※Oṃ vajraratna,~**゜”~
゛Oṃ trāḥ svāhā※*~”

マイケルを内包挟んで
上下のジオラマが符号さると、
柱のような光線が、
マイケルを
貫いた。

**※~Namo Ākāśagarbhāya~Oṃ ~*ali kalmali mauli svāhā~**゜

「すまぬが、暫し 『縛』とする」

大師が 次の印を胸の前で結ぶと、
柱の周りに花の様な結晶が 12個
現れて、
マイケルを貫く柱に、光繋がる。

再び、次の印が結ばれると
マイケルを挟んで上下に光柱連結
されたジオラマを軸に
花の結晶が 煌めき旋回を
始めた。

「、、、『走査』。マイケル、、
、、 どうじゃな?気分は?。空
に浮かんどる状態じゃろう?」

大師がジオラマに向かって
話掛けると、
12個浮かぶ花の結晶から
マイケルのサウンドが響く。

「凄い!魔法の使えない、わたし
が、空に浮かんでるみたいよ!」

その返事に大師は白い顎髭を
片手でしごいて、
少し滲んだ 目を細める。

この娘の 美徳は このような
心根だろうなと。は、

大師の 人間らしい思いは
今は、本人に告げる事はなく。


「けっこう。では 浄化された
調整世界のエネルギーを変換
するぞ。暫し、おぬしは生き霊の
様なものだ。なあに、すぐじゃ」

そして、空中に胡座をかくと
最後の印を結んで

「『road』」

と囁いた。

『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン

ジオラマから弔いの鐘が


『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン

花の結晶を通じて

ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン

大音声の津波と轟く
マイケルは、
思念体を切り裂くような
爆鐘に 絶叫を上げて
空で
思念意識さえも手放した。

『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン

『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン

『始まりの時間軸 を road。』

『己が 首を、恋する相手の刃で
掻き斬る乙女へ 。

其処に、愛は あるか? 』