高くはない、けれど、低いわけでもない声。
白い肌。ほんのりと赤い頬。気だるげなタレ目と、その左側の泣きぼくろ。小さめの鼻。ツンと上を向いている、所謂アヒル唇。
「ごめんて。で? そちらの方は?」
「あ? ああ、こいつは、」
「門叶玄です! 家事すっげぇ得意です!」
正直に言おう、ドストライクだ。
絶世の美女というわけではない。もちろん、個々の造形は整っているし、総合的なバランスも絶妙なので美人であることに違いはないが、彼女よりも可愛い女も美人な女もそれなりに数は見てきた。
が、それを踏まえて言おう。ドストライクだ。泣きぼくろを舐めたい。
とはいえ、性癖に刺さる外見が恋愛感情に直結するかといえば、決してそんなことはない。肉欲には直結してしまうけれど。
「……おい、玄、」
そんな俺の思考をおそらく悠真は読んだのだろう。訝しげな視線をあからさまに寄越してきた。
「ゲンくん? でいい? あれでしょ? おにぃが言ってた住み込みのやつ」
「そうです好きに呼んでください!」
しかしそんなの関係ねぇ。
手を出すなよとは言われたが、妄想するなとは言われていない。
やべぇ、これはやべぇ。動くオカズだ。
金はある。しかしそれ以外がダメだと聞かされていたからどんな女かと思えばこれである。全く、人生とは何が起こるか分からないものだ。