「門叶くん、この資料、ちょっと直して欲しいんだけど、いいかな?」
「あ、はい。どこですか」
「えっと、こことね、ここの文字を」
「分かりました。すぐ直します」
「ありがとう。お願いね」

 誤字を直して欲しいと渡された資料。四度目のクビ以来の仕事だからなのか、元々の能力の差なのか、雇ってもらえてから五ヶ月ほど経つというのに己が作成した資料には未だ誤字が多い。新卒の頃にはできていたタッチタイピングが今は、できますと胸を張って言えないのもおそらく原因のひとつだろう。

「……ダメだな、俺、」

 申し訳なさを引っ提げて、早速修正に取りかかった。