真琴は採用試験を通り実家から遠距離の役所へ入所するために一人暮らしを始めた。

もちろん、俺のマンションのベランダから見える場所へ。
しかし、真琴が社会人になった年にアメリカの大学へ二年間の転勤になり出国する事になった。
この転勤は自分自身も希望していたが、まさかこんなに早く打診されるとは寝耳に水だったわけだが。

「もしもし?」

『あっ!兄貴?元気ー?』

「はあ?なんだよ?」

『いやいや、ホームシックになってないかなあ~ってね!』

「そんな内容の電話なら切るぞ?
 こっちは何時だと思ってるだよ。」

『ごめん!ごめん~
 真琴情報~欲しくない?』

「はあ?早く教えろ!!」

『ははは!!
 ただじゃないからな~
 どうやら、真琴の職場に真琴の事を気に入ってるやつがいるって話だぞ!』

「…。まさか、付き合ってるわけじゃないよな?」

『まだ、その段階じゃない。
 真琴のお義母さんが大学の時みたいに知らないうちに付き合ってたら、どうしようかって悩んで俺に連絡をくれたんだよ。
 兄貴はアメリカに行ってるから。』

「明日、日本に帰国する。」

『まじ?
 とりあえず、俺はいつもの店の高級ワインで良いからな~』

忙しく慌ただしい日々に、真琴の事を日本にいる協力者にお願いしておいて良かった。
大学の研究室の仲間や教授には"日本の家族に問題が発生したので、一時帰国されて下さい。"と伝え、普段の無遅刻無欠勤が項を呈してyes を貰えた。