真琴が就職をして五年が経った頃に弟の千景から連絡を貰った。
もちろん、真琴関連だ。

『もしもし?兄貴?今って時間ある?』

「ああ。なに?」

『俺が電話するってことは真琴絡みなのは分かるよな?
 あいつ、仕事終わりに時間が勿体ないとかでバイトしたいらしいんだよ。』

「はあ?」

『いや、だから!
 副業するのにいい場所ないかって、昨日電話で相談されたんだけど、兄貴良いところ知ってる?』

「何で千景に相談してんだよ?」

『…それは知らないけど。
 兄貴的には副業はさせたくないと思うけど、案外意思が強くて引かないんだよな。』

「ふ~ん。
 なら、東西百貨店のいつもの店がバイト募集してたぞ。」

『まじ?ってことは真琴に紹介して良いんだな?了解~』

俺が、この俺が、みすみす真琴に副業なんかさせるわけがないだろ。
この後すぐに父の友人であるオーナーにアルバイトを一人雇って貰うお願いをし、真琴の事は俺の花嫁修業で働かせたいと言いくるめ短期間でお願いをしていた。
真琴からしたら突然の退職だっただろうが、俺からしたら想定内の出来事。
もちろん、店側も想定内の出来事だから迷惑は掛かっていない。

真琴をそろそろ俺のモノにするチャンスが巡って来たのだと、その日がやって来たと理解し彼女に会いに行く準備をする事を決断した。
それはもちろん、彼女と一緒に暮らす場所を手に入れてから迎えに行く準備だ。