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精霊たちのメサイア

アガルタ王国
6.5【閑話】妹

【閑話:妹】


ヴァレリー侯爵家の三兄弟は王都にある長男のアロイスの屋敷の応接室に集まっていた。


「レイラを教会に連れて行ったそうだ」

「何のために?」

「適性検査だ」

「え!? レイラっていくつなんだよ!?」

「16歳だと」

「なっ__私はてっきり12、3歳かと思ってましたよ……」

「僕も……」


エタンとグレゴワールは驚きの表情と、信じられないという苦笑いを浮かべている。話をしているアロイスですら、まだ信じられない思いだ。


「それで? 何属性だったの?」

「光属性だ」

「という事は癒しの能力ですね……最悪招集命令が下されれば戦争に駆り出される恐れがありますね」

「結婚でもしてれば戦地に行かなくてすむだろうけど、その前に戦争が起これば行かないというのは難しいだろうね。 っていうか、そんな話の為に集まれって言ったわけ?」

「違う。 もっと大事な話だ」


アロイスは紅茶を一口飲むと、フーッと息を吐いた。眉間には深く皺が刻まれている。こんな様子のアロイスを久しぶりに見た2人は、真剣な顔になった。


「フェニーニ枢機卿にベアトリス様からお告げがあったと父上から連絡が届いた」

「神のお告げが? ヴァレリー家に対するお告げですか?」

「我が家も全く関わりがないわけではないが、お告げはレイラの事だ。 レイラはこの国の光となるとベアトリス様のお告げがあったそうだ」

「あの子は一体何者なんだろうね……」

「それだけではない。 レイラはベアトリス様の加護を授かり、そしてレイラが平穏に暮らせる様に教団は見守る様にと告げられたらしい」

「それはまた……良い事なのか、悪い事なのか…判断に困りますね」


3人同時にため息が漏れる。


「レイラはこれから社交界デビューをする年頃の娘だ。 養子とはいえ侯爵家の人間になった以上、王家や貴族から目をつけられるだろう」

「その上ベアトリス様の加護を持っていると知れれば、政権争いに巻き込まれる」

「我がヴァレリー家が政治の中でどの家よりも中立でいられたのは、男家系だったからです。 貴族たちも勿論だが、なによりも王家の人間に目をつけられる方が厄介で恐ろしいですね。 どの王子が王座についてもおかしくはないですから」

「少しでも力が欲しいだろうから、ヴァレリー家を取り込みたい派閥なんていくらでもあるよ」


暫しの沈黙の間各々レイラと初めて会った日のことを思い出していた。

アロイスは両親が何の相談もなく養女を取った事に対して、とてつもなく激怒していた。両親に怒ってはいたが、レイラに対して怒りなどは持っていなかった。だが顔合わせの日レイラには嫌な想いをさせてしまうだろうと思い、お菓子を買って行った。両親に対し怒りをぶつけた後レイラと顔を合わせたアロイスは、不思議と怒りが鎮まっていた。

エタンはレイラの事を聞いて真っ先に頭に過ったのは、政権争いに巻き込まれるのではないかという懸念だった。どの派閥もヴァレリー侯爵家の後ろ盾を欲しがっている。それを露骨に出さないのは、出したところで付け入る隙がないと分かっているからだ。だが、我が家に女の子がいると分かれば、王子の相手にと望むだろう。そしてその先にあるヴァレリー侯爵家の力を頼りにするだろうと頭を悩ませた。だがレイラと会って、いくら悩もうがもうどうしようも無いのだと、自分たちが守るしかないのだと腹を括った。

グレゴワールは妹が出来たと聞き、心の底から喜んだ。母であるクラリスが妊娠していると分かった時、弟か妹ができると誰よりも喜んでいたのは彼だった。だがその想いは届かず、母クラリスが泣き悲しんでいる姿を見て更に悲しみに暮れた。レイラと会った瞬間胸の中が暖かくなり、更なる喜びが溢れた。決して綺麗とは言えない貴族社会だが、レイラの心が闇に囚われてしまわぬ様精一杯力になろうと心に誓った。


「レイラが今までどんな風に過ごしてきたかはわからない。 けど、今は僕たちの妹だ。 守ってあげたい」

「同感だ」

「そうですね」


3人顔を合わせ、スッキリとした表情を浮かべ笑った。そしてアロイスが「いいものがある」と言って棚から年代物のウィスキーを取り出した。3つのショットグラスに注がれたウィスキーを掲げ、音を鳴らすとそれぞれ一気に飲み干した。日が沈む前に始まった宴は、呆れるほど長く続いた。






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