次の日、私は泣きはらした目で、直哉に言われた通り、直哉の家に向かった。


玄関の鍵は開いていた。



ただでさえ何もなかった家だが、家具がなくなり、さらに広く見える。


私はもうこれ以上何も見ないで、真っすぐ直哉のいたあの部屋に向かう。



階段を上がり、躊躇なく、私は部屋の扉を開いた。



「……ったく、なんて顔してるんだよ」



ああ、いよいよ私頭おかしくなったかな。



直哉が見える。



いつものあの大きなパソコンをいじりながら私のことを笑ってくる。



あ、今立ち上がって、あの大好きな笑顔で私に近づいてきてる。



いよいよ、幻覚が見え、幻聴まで聞こえてきてるなんて、私精神疾患でも患ったのか。



「おい、來花」



ほら、今、直哉が私の肩をつかんでゆすって……。



「ゆすって……」


「來花、聞こえてんのか?」


「あ、はいはい!」



我に返る。



ん、ちょっと待って。



「え、本物?」



私は私よりも20センチ以上も高いところにある直哉の顔を両手でしっかり包み込んだ。



実態がある。


しかも温かい。


幽霊とかでもない。



「ん?」



訳が分からなくなる。



何が本当で何が嘘か、わからなくなる。



「ごめん。説明させて」



そういって、直哉はそばにあったベットに私を座らせ、その隣に直哉も座った。



「とりあえず、俺はお前の知ってる直哉であってるから。幽霊とかそんなもんじゃないから」




私の考えを読んだのか。


私はその言葉にうなずく。


そして、その後直哉はここに自分がいる経緯を、私にもわかりやすいように説明してくれた。



つまり、未来に帰るのは立花さんとケントだけで、直哉は最初っからこの世界に残ることを決めていたらしい。


この世界に残るには、ぎりぎりまで、あの加納さんという直哉の実の叔父をだまし続ける必要があった。


土壇場で、直哉だけこの世界に残れるよう、未来行きのゲートを通らないという選択肢を作るために。



最後は、ケントさんと立花さんが無理やり、その加納さんの使いとやらを未来のゲートへ連れ込んだらしいが。



「ということは?」



直哉の顔を見上げる。



「引き続き俺ここにいるから」


「夢は?あの、未来に四季を作るってやつ」


「ここからでもプログラミングできるし。何より、ここにいたほうが実際にもみながらできるからはかどるし。親父たちの了承はとってある」



「じゃあ、親父さんの会社の後継者は?」


「カズヤを推薦した。誰も文句言いようがねえよ」



そういって、直哉は優しく私のでこにキスをする。



真っ赤になる私の顔。



完全にもう直哉は私のことをからかってる。



だけど、もういい。


今日は許す。


だって……。



「好きだ、もう、バカ!」



私はそういって、直哉に抱き着いた。


直哉は笑いながらも抱きしめ返してくれる。
 






桜がほほ笑む、素敵な出会いを目の当たりにして。


ヒマワリが歌う、太陽と共に。


モミジが照れる、誰かを思って。


椿がうつむく、春を待ちわびて。












そんな綺麗な季節の刹那をまた君と一緒に見に行こう。




これからもずっと、永久に――――――。