「はーーーーっ」


ポタポタと降る雨。どんよりとした空。

廊下の窓からそれを眺めて、豪快なため息をこぼしたのは田中先生。

いつもと同じ、緩くセットされた黒髪に、丸い眼鏡をかけてスーツをビシッと着こなしている。

だけど、童顔だからか、あまり堅苦しい雰囲気はない。

先生曰く、大学生に間違えられることも多いらしくて、実際に男子の輪にはよく溶け込んでいる。

そんな彼が何やら恨めしそうに外を見ていた。


お手洗いから教室に戻る私は、スルーをすることもできるけど。


「先生、どうしたんですか?」


と声を掛けてみた。


「おー、星野か」


私を一瞥した田中先生は「いやー」と話し出す。


「今日、鈴木休みじゃん?鈴木に図書室の掃除お願いしてあったから、どうすっかなーと思って」

「あー…」


たしか鈴木さんは図書委員で、今日は風邪でお休みだと朝のホームルームで先生が言っていた。


「図書室の掃除…私やりましょうか?」

「え?」


深く考えずに言えば、先生は驚いたように私を見た。