自習

黒板にドンと大きく書かれたその2文字。


視線をちょっとずらせば、目に入るのは今日も今日とて遥斗くん。

教卓前の席に座り、屈託のない笑顔を見せている。

…なんだけど、その相手は当然私ではなくて。

青木まりやちゃん。
遥斗くんの左隣の席に座る女の子。

彼の笑顔は彼女に向いている。

まりやちゃんの表情はよく見えないけど、遠目からでも笑っていることがわかる。


…可愛い。

まりやちゃんとはまだ、あまり話したことがなくて、どんな子かはよく知らないのだけど…。

あんな風に笑っているのは珍しい気がする。

まりやちゃんを見た目の印象だけで言うならば、“お姉さん”って感じだ。

センター分けされたグレーアッシュの髪に、お人形さんみたいな顔立ち。

未緒とはまた違った大人っぽさを放っている気がする。


そうして、さっきから私の目は遥斗くんとまりやちゃんを行ったり来たり。

一応、机には数学のノートと問題集を広げている。
だけど、ノートに書いてある数式は途中でパタリと止まってしまった。

でも…みんな勉強していないし…って言い訳をこぼす。