ふわぁ。ってあくびをしている場合じゃない。

テレビの左上に映る08:25の数字。

それを見ながらリモコンに手を伸ばし、ブツっと電源を切った。


ハンカチ、ティッシュに、ポーチとスマホ…。教科書やノートも入ってるから大丈夫だろう。

右肩にスクバを勢いよくかけて、ローファーに足を通す。

手には鍵を握った。


「行ってきまーす」


そうやって言うのも、返事が返ってこないのも、いつものこと。

…なのに。


「えっ、ほ、ほ、星野さん…?」


名前を呼ばれてドキッとする。


「は、ると…くん」


顔を動かした先にいたのは、望月遥斗(もちづきはると)くん。

クラスメイトの彼がどうしてここに…?