みんな行っちゃった……。

「莉乃ちゃん、やっぱり、周のことなんだけれど、いいかな」

「あ、はい!」

「実は、周は俳優を目指しているんだよ」

「え!すごい!」

 確か、家で会った時には、マスクをしていたけれど、やはり美形ということがわかる綺麗さだった。

「だけど、人と接するのが苦手でね」

「そ、そうなんですか……」

「……莉乃ちゃんは覚えてないかもしれないけど———」

 ガチャッと尊さんの話を遮るようにドアの音がして、誰かが入ってきた。

「失礼します。神坂莉乃さん、担任の松崎咲子です、よろしく」

「あ、神坂莉乃ですっ、よろしくお願いします」

 ペコペコと頭を下げていれば、睨まれているのに気がついた。