あっという間の日々が過ぎ去り、気づけば約束の土曜日を迎えていた。

 創くんと食事を終えた後、私は勇気を振り絞って千秋さんに連絡を取った。何度も携帯と格闘しながら、悩み抜いて出した結論。

 もう1度だけ、彼に会ってみようと思った。


 迫ってくるその日に緊張しながら、生活を送る毎日。

 どんな顔をして会おう、どんなテンションでいこう、第一声は何にしよう、と。

 散々考えたけれど、結局何も浮かばずに迎えたその日。モヤモヤした気持ちのまま、勇気を出してチャイム押した。

 しかし、そんな心配も無意味で、いざ対面してみると意外にも呆気ないものだった。



「お久しぶりね、晴日さん。」

「お招きありがとう。」


「ご無沙汰しております。どうぞ、上がってください。」


 千秋さんのご両親が帰国すると聞いていた土曜日。その日は、彼の自宅で一緒にディナーをすることになっていた。

 緊張気味にご両親をリビングへ案内しながら、千秋さんと一瞬だけ目を合わせる。


 ――私の役目は、妻を演じること

 ――ご両親に疑われないこと


 抱擁を交わす親子の姿を前に、複雑な心境で大きく深呼吸をした。