――ガシャンッ

 そう大きな音を立てたのは、ある日の夕方。夜の開店準備をしていた店内でのことだった。


「すみません。」

「どうした?大丈夫?」

「あっ、大丈夫です!すみませんっ。」


 こういう仕事が初めてだったわりには、今までお皿も割らず、意外と器用にこなしてきた私。しかし、ついに半年のアルバイト期間を経て、初めてやってしまった。

 優しいスタッフのお兄さん方が駆け寄ってきて、一緒に散らばったお皿の破片を集めてくれる。そんな状況にも、平謝りするのが精一杯で、耳が熱くなった。


「晴日ちゃん、珍しいね。体調でも悪い?」

「あ、いえ、すみません。ボーッとしてて。でも、大丈夫です。」

 気にかけてくれるオーナーの言葉にも、そんな返答しかできなかった。

 けれど、大丈夫だとは言ったものの、全然大丈夫じゃない。



 全ての原因は、今朝送られてきた突然のメッセージ。

 その送り主に心乱され、一日中頭は真っ白になっていた。


「晴日ちゃん、顔色悪いよ?今日は休んでいいから。ね?」

 何の事情も聞かず、気遣ってくれたオーナーに付き添われ、私はバックヤードに戻された。