鳴り響いたヒールの音が、ホールに満ちる空気を一変させる。

 小さな体から発せられているとは到底思えないほどの、堂々たるオーラ。燃えるような真っ赤な眼差し。まさしく覇者としての風格を身に纏い、アリギュラは壇上に立つ。

 腰に手を当て、隅から隅までアリギュラは貴族連中を見渡す。と思いきや、マントを払うようにぱっと勢いよく片手を広げた。

「我が名はアリギュラ!」

 特に声を張ったように見えない。けれども、凛とした声はホールを震わせ、居合わせた人々の意識を独り占めにする。いつの間にか楽器の音色も止み、楽団のメンバーも、楽器を弾くのも忘れてアリギュラに視線が釘付けになっている。

 しんと静まり返る中、アリギュラはふっと笑みを漏らして先をつづけた。

「知っての通り、異世界より招かれた聖女だ。今宵はわらわを召喚したことを祝う宴ゆえ、一言喋れと言われたのだが……。その前に、一つ仕掛けを施そう」

 そう言うと、聖女は傍らに控える聖教会の神官を見やった。