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重たい目を擦りながら身支度を整え、今日も今日とてエルメナとの令嬢としての嗜みを学ぶべく、ようやく気慣れてきたドレスに袖を通す。

昨夜は随分とギリギリまでドラゴンの研究に時間を費やしてしまったせいか、睡眠時間があまり確保出来なかった。

この所イリアの変わりすぎた生活にも慣れてはきているものの、睡眠時間に関しては三時間程寝れればまだいい方といったところであろうか。

自分で決めた道を歩むと決意を固めた以上、今の生活に不満は言ってられないと気持ちを引き締めるために冷水で顔を洗う。

「今日も頑張らなきゃ」

気合いを入れる掛け声を発し、鏡に映る自分に向かって頷く。その顔はやや疲れ気味だが、弱音は吐いていられないと朝食を摂りに向かう。

アゼッタと共に朝食を囲い、お互いやるべきことに向かって腰を上げる。

いつもの様に客室に向かうとエルメナが凛とした表情を浮かべながらイリアを来るのを待っていた。

「おはようございます、エルメナ様」

「おはようございます。早速で悪いのですが、今日は大広間にて特訓です」

「分かりました」

挨拶する際の仕草や声のトーンには何一つとして指摘されなくなったことに、胸を張りながら颯爽と歩くエルメナの隣に着いて、屋敷の大広間へと足を運んだ。

屋敷の使用人達が丁寧に管理していてくれる大広間は何処も彼処も窓から差し込む光を反射して美しく輝いている。