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太陽の光が燦々と窓から降り注ぐ中、イリアは広い施設の中でせっせと作業を繰り返していた。

死を覚悟した昨日という日の記憶は今は遠い過去の出来事に思えるほど、今は目の前に広げられた大量の本と睨めっこしながらのめり込んでいた。

それもそのはず、大好きなことを前にあれやこれやと考えるのも惜しいのだから。

最後の一つの薬草調合し煎じて、床に横たわる人々で懸命に治療に当たる医者に急いで手渡した。

「先生……!最後の一つ完成したので使ってください!」

薬物中毒に陥った王都の人々はイリアの鎮静剤によって、瞬く間に落ち着いていった。

アルロスの手によって悪へと染められた人々だったが、短期間の中毒症状しかまだ出ておらず迅速なイリアの対応がギリギリ間に合って事なきを得た。

この広い王宮内の医療施設で約一週間程の安静期間を過ごせば、今までと何ら変わらない生活が送れるはずだと医師もイリアの薬を見て褒め称えた。

一晩寝る間も惜しんで作り上げた薬は、どれもネグルヴァルトで生息する植物達。

ヴァイルに運んできてもらい移動時間を短縮し、ようやく最後の一つを先程作り終えた。

ーーやっぱり頼んでみて正解だった。

ライジールに薬を作らせてほしいと懇願し、素早く承諾されたのはイリアの熱量が強すぎたせいだということに本人は何も気づいていない。