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舞踏会から帰ってきたイリアの表情から何かを汲み取ったのか、ゆっくり休みなさいと声を掛けられたイリアは深い眠りに着いていた。

迫り来る人を見下すような目があちこちから向けられるそんな夢を見ていた。昨夜の舞踏会で向けられた視線が、彼女に影響を与えているのだ。

泥沼の中で藻掻くような苦しみがじわじわと襲ってきて、目を覚ませば何やら部屋の外が騒がしい。

ーー夢……か。

窓の外を見れば久々に太陽が高い所まで昇っていて、寝すぎたせいか体も妙に重たく感じていた。

外の騒動は一体何なのかと、ゆっくりと重たい体を動かしてベッドから起き上がった。

「イリア!疲れてるところ申し訳ないのだけれど!」

慌てた様子で部屋に入ってきたエリーの姿に、唯ならぬ出来事が起こっているのだと察したイリアはぼうっと霞む頭を、無理矢理叩き起した。

近寄ってくるエリーの腕をそっと撫でとりあえず落ち着かせていると、彼女の手の中に一通の手紙の存在に気づく。

お茶会かそれまた次の舞踏会の招待状かとエリーに目配せをするが、その瞳は震えるように揺れている。

「貴女宛に手紙が届いたの」

「そうみたいですね」

「落ち着いて聞いて欲しいの」

緊迫した空気に小さく頷くことしか出来ず、エリーの言葉を待った。