夕刻、客のまばらな宿の食堂にて、アーシェリアスたちは早めの夕食にありついていた。

 骨付き鳥の照り焼きを頬張るエヴァンと、フレッシュなサラダをフォークでつつくノア。

 ふたりは二手に分かれた後、順調に女性用の服や装飾品ゲットできたらしい。

 一方、途中まで順調だったものの、女将とコスタの祖母であるリンカ・イディアルの料理本を拝めず宿へと戻ったアーシェリアスとザック。

 食事を味わいながらふたりが状況を説明すると、フォークを置いたノアが「つまり」と口を開いた。

「幻の料理について書かれてる確証はないけど、その可能性がある本は図書館にはなくて、どっかの誰かが盗んで持ってるってこと?」

 優しい味わいのマッシュポテトをスプーンに乗せ、アーシェリアスは頷く。

「そういうことね」

 アーシェリアスの様子に、エヴァンはエールの入った木製のジョッキを手に首を傾げた。

「本をゲットできなかったのに、あまり落ち込んでないな」

 昨日の落胆ぶりをノアから聞いていたエヴァンが問いかける。