昼食時。

 城の厨房は、本日も賑やかな声が飛び交っている。

「エスト! 鍋の方よろしく!」

「パン焼き上がりましたー」

「白米追加で焚いておいて!」

 慌ただしくスタッフたちが動き回る中、バレットがフライパンを返しながらアーシェリアスを見た。

「アーシェリアスさん、忙しいのに朝から働かせて悪いね」

 謝るバレットに、アーシェリアスは「いいえ」と笑みを浮かべつつも玉ねぎをくし切りにしていく。

「今日はドレスのサイズ調整だけなので大丈夫ですよ」

「いやぁ、楽しみだな。アーシェリアスさんのウェディングドレス姿」

「私は緊張で心臓が口から飛び出さないか心配です」

 アーシェリアスが苦笑すると、エストが「アーシェリアスさん」と呼んだ。

「食堂からお誘いの声がかかってますよ」

「えっ、もうそんな時間?」

「ああ、もうここは大丈夫なので上がってください」

 バレットから許可をもらい、アーシェリアスは「はい!」と笑顔を見せた。