第6話




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白菜も、焼売も、春巻も・・

不思議なほどに辛さを通り越して・・むしろ“美味しい”と感じられるようになった。


額から噴き出す汗。
目から溢れ出る涙。


全部出し切ったから、

“誰かに話を聞いてもらえる”喜びを感じたから、

真剣に・・椿さんが話を聞いてくれたから。


もう何杯目の牛乳?と思いながら・・

グラスを持ったまま・・
その後の韓流ドラマの話も聞きながら・・


いつの間にか・・何年ぶりかに・・
少しだけ・・笑う事ができた。






「ご馳走様でした。
ありがとうございました。」


「女子会を終えたから明日から“アンナさん”と呼びますね。

私の事はユカリと呼んでください。」


「・・・はいっ。」


激辛中華料理屋さんを出る頃には、
すっかり満月映える夜空になっていた。


この5年、ずっと心の中に閉じ込めていたシンジ君との思い出が解放されて、

帰り道を歩くこの両足は・・
不思議なほどに軽やかになっていた。