「瘴気を感じた場所に転移した直後、空から人らしきものと瓦礫が降ってきた。救おうとして風の魔法で落ちる速度を落としていたんだが瓦礫の量が多くて避けきれなかった。頭に直撃して気絶した。結局、目が覚めたら人らしきものはいなかったし、あれがなんだったのか分からずじまいだ」
「勇者の血を引いているから瘴気に一定の耐性があると過信してはなりません。恐らく、吸い込みすぎて幻覚を見たのでしょう」

 瘴気は濃度の量によって人体に影響が出る。
 軽度の場合は頭痛や目眩が、中度になると幻覚が、重度になれば正気を失い錯乱状態に陥る。

「瘴気は魔物かネメトンからしか発生しない。俺が感じた場所はネメトンや救護所よりも国内側で魔物らしきものはいなかった。……最近、ネメトンに近い領地で原因不明の瘴気が発生しているな」
「はい。ここ一ヶ月で十件は超えています。瘴気は時間が経てば消えますがそれを吸い込んでしまえば当然人体に影響が出ます。なので帝国騎士のみならず中央教会の聖職者に協力を募り、先週より共同で調査が進められています」

 聖職者は神官クラス以上の階位で守護と治癒を持つ者に手伝ってもらっている。
 万が一瘴気が発生しても精霊魔法の守護があれば結界を張って防ぐことができ、その間に退避できる。また、治癒があれば魔物に襲われ負傷しても癒やすことができるのだ。