「思い出なら片方が覚えているだけで十分です」




凛上は、「そうじゃない」って言った。
でも私が押し切ったから、仕方がなく推薦の枠は凛上の元に移動した。凛上は最初から最後まで納得していなかった。

でも私は凛上に最後に言ったんだ。


「あなたが私のことを好きなら大丈夫だよ」



晴れの日だった。抜けるような青空が私を見下ろしていた。
推薦は取り消し。体育館から一人外に出る。思い切り伸びをして、腕時計を見る。
時刻は昼の十一時前。 お腹が空いた。帰ったらご飯を食べよう。


スリッパを履いて生徒玄関に向かい、スニーカーに履き替えてキャリーケースを回収する。血で汚れていたはずのスニーカーも、今ではすっかり綺麗だった。