当たり前だけど黒の学ランに身を包んで、肩には日の光の粒が積もって。

目にかかるくらいの黒髪が、ふんわりと揺れる。その奥の瞳が私を捉えて離さない。


吐息が震えた。
私は、ようやっと、



「大丈夫。私、見てない」



それだけ言った。
思っていたより声が上ずってしまった。

凛上は、私のその言葉を聞いて安心して、「逃げよう」とすぐさま建物の隙間の奥の方へ歩いていくから。

嫌な予感がした。私は自分のことなどなにも考えていなかった。ただ考えたら負ける気がしていた。