ケータイ小説 野いちご

その答えは恋文で

4通目:名字と名前


 塚本玲音は自称博愛主義者、他人から見ればただの女たらしの金髪チャラ男である。

 そんな彼のせいで、私の評判は更に下降の道を辿る事となった。

 おそらく女子の皆様のお気持ちは「彰サマという超ハイスペック彼氏がいるくせにレオにまで手ぇ出すなんてなんなの許せないあのクソ女! 箪笥(たんす)の角に小指ぶつけて痛みに悶えろクソ女!」といったあたりだろうか。

 おかげで私の機嫌はますます悪くなった。あの忌々しい金髪め。

「し〜おっりっちゃん!」

 ……ほら、呼んでもないのにまた来やがった。

 塚本くんは休み時間のたびにA組を訪れては私の席で好き放題喋り、チャイムが鳴ったらまだ一緒にいたいだの次また会いに来るからそれまで我慢してねだのという戯れ言を大声で口にして自分のクラスへと帰って行く。今日は朝からこれの繰り返しだ。

 私はそのたびに周り(特に女子生徒の皆様)からレーザービームのような鋭い視線を向けられているのだからたまったもんじゃない。

「塚本くん、いい加減にしてくれない?」
「ひどいなー栞里ちゃん。俺が冗談でこんな事してると思ってんの?」

 前の席の主が不在なのを良いことに、塚本くんは椅子に逆向きに座って私と向かいあっている。ニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべながら大きく息を吸うと、口を開いた。

「栞里ちゃんの事好きになっちゃったから覚悟しててねって、俺昨日言ったじゃん。忘れたの?」

 その瞬間、クラスがどよめいた。

 ……わざとだ。

 この人わざと皆に聞こえるように言ってるんだ。なんなのこの人。救いの手を差し伸べてくれたと思ったら、実は私を地獄に突き落とそうとしてたってこと? そうか、正体はチャラ男のふりした悪魔か。

「ね? だから今日一緒に帰ろ?」

 上目遣いで誘ってくるその仕草は確信犯だ。自称女の子限定の博愛主義者というだけあって、やはり女の子の扱いには慣れているらしい。残念ながら私には通用しないけれど。

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