ケータイ小説 野いちご

その答えは恋文で

3通目:ポニーテールと金髪


差出人:平岡 彰
件名:

今日は突然ごめん。
そしてありがとう。楽しかった。
お薦めの本いっぱい考えておくから、
今度また一緒に帰ろうね。

じゃあ、また明日学校で
おやすみ!


「……ムカつくほどいい感じね。アンタらホントに偽物カップル?」

 メールを読んだ由香がつまらなそうに私のスマホをカウンターに放り出した。毎度思うが人の私物はもっと大切に扱ってほしい。

 放課後の図書室。

 私は昨日の出来事を由香に話し……いや、半強制的に報告させられていた。

 今彼女が読んでいたのは、昨晩平岡くんから送られて来たメールである。

 そう。モテる男はやはり格が違うらしい。

 家に帰って落ち着いた頃に、平岡くんからこのメールが届いたのだ。なんという気遣い。なんというハイスペック。モテる男はアフターフォローも怠らないようだ。こんな奴漫画かホストにしかいないだ……あれ? これってもしやホストの手口? いかん。気を付けないと騙される。

「で? 一緒に帰った感想は?」
「……意外と楽しかった、かな」
「ふーん」

 昨日平岡くんにも言ったけれど、一緒に帰ったのは面倒ではあったが迷惑ではなかった。ほら、推しの作家知ってたし。

 断言しよう。本好きの人に悪い人はいないのである。

 変わり身の早さは我ながら現金だと思う。でも、マイナスだった平岡くんの印象が昨日の出来事でプラス方向に傾いたのは事実だ。それに、家に帰ってから気付いたのだが、どうやら彼は自分の家と反対方向にある私の家までわざわざ送ってくれたらしい。こんな奴漫画かホストにしか、以下略。

 ……ああ。勘違いしないでほしいのでもう一度言っておくが、平岡くんの印象はプラス(・・・)ではない。あくまでプラス方向(・・)、だ。

「まぁいいんじゃないの? アンタ見た目は良いんだしさ。あたしは中々似合ってると思うよ?」
「そんなの別に嬉しくない」
「うっわー。今の台詞彰サマファンが聞いたらアンタ間違いなく血祭りだね」

 ……確かに。そしてその光景が容易に想像出来てしまうのだから恐ろしい。

「でもさぁ、ほんと気を付けなよ? あいつ、アンタは知らないかもしれないけど名前に様付けで呼ばれるくらい人気あるんだからさ。嫉妬に狂った女達からの呼び出しとか嫌がらせとかあるかもしんないじゃんか」

 確かにその可能性は否定出来ない。私を快く思っていない女子生徒は多いだろう。校内を歩くたび身体中に突き刺さる鋭い視線がその証拠だ。

「もし呼び出されたらその時はすぐあたしに知らせなさい」
「由香……」

 私は初めて由香を心から良い奴だと思った。やはり持つべきものは友達だ。彼女も一応私の事を心配してくれているらしい。純粋に嬉しい、感動した。今ならメロスの気持ちがよくわかる。

 どうだ! その辺でサランラップみたいなペラペラな友情を築いている奴ら! 友達は数じゃない。心だ! 絆だ! 信頼だ! 私はそう声を大にして言いたい!

 そんな風に感動に浸っていると、「ふふふふ」という由香の不気味な笑い声に気付き我にかえった。

「高みの見物ついでに現場の証拠写真撮ってソイツ脅して一生私の奴隷にしてやるんだから。ふふっ楽しみだわ」

 …………前言は全て撤回だ。

 友情なんて砂上の楼閣。ああ神様、どうか私の感動を返して下さい。

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