二年生に進級したばかりの、五月半ばのことだった。

 元々人付き合いをあまり得意としない私は、クラス内で着々と作られていく女子のグループには加わらず、休み時間は自分の席で読書をする事を好んでいた。

 これは中学の時からずっと続けていることだ。極力、面倒事には関わりたくないから。

 だって、不特定多数の人間と広く浅く関わるよりも、少人数でも狭く深い関係を築いた方がよっぽど有益だと私は思う。

 表面だけ覆われた薄っぺらいサランラップのような友情ごっこなんてまっぴらごめんだ。

 誤解がないように言っておくけど、私は別に友達がいないわけではない。

 私にも一応友達と呼べる存在は少ないながらもちゃんといる。つまり何が言いたいかというと、私は私の事を少しでも理解してくれる人間が一人でもいてくれれば、それで十分だという事だ。

 ……話を戻そう。

 そんな若干浮き気味の私がクラスメイト達と必要最低限の会話しかしないのは、最早説明しなくても分かるだろう。

 もちろん挨拶されれば返すし、話し掛けられればちゃんと返事もするけれど、自分からそういった行動を起こす事は滅多にない。

 それは例え席が隣でも同様だ。

 席が隣になったからって特に用事もないし、わざわざ関わる必要性なんてどこにもないから。

 ちなみに私の席は教室のど真ん中一番後ろである。残念な事に、右にも左にもクラスメイトがしっかりと座っている。せめてどっちかが壁だったら良かったのに。自分のくじ運のなさを少しばかり恨んだ。

 だが、不幸中の幸いか両隣が男子生徒だったので、特にこれと言って話をする機会は訪れず、私の平穏な日々は保たれていた。


 ──そう、あの日の放課後までは。