「潤様、どうぞ、こちらへ。」


立ち尽くしていた私に声をかけたのは下田さん。
長年の悪魔の仕事のパートナーだ。


私をエレベーターの方へ促し、車まで誘導する。


悪魔が用事を入れたときには下田さんが途中まで送り迎えをしてくれている。


私の監視役だ。
家を知られたくないから、行きも帰りも途中までしか頼まない。悪魔にバレているかもしれないけれど、自分から知らせるようなマネは絶対にしたくなかった。


小さい頃から顔を合わせる機会があった下田さん。
スマートに車のドアを開けたりしてくれるからお嬢様気分でいられたのは幼い頃だけ。


悪い人ではないだろうと分かってはいるが、所詮は悪魔の仲間。


いつも『心配しすぎるが故の行動ですから受け入れてあげてください。』と悪魔をかばい私に言い聞かせている。