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いきなり呼びつけてきたその人物と会うのは随分と久しぶりだった。

高校を卒業して以来かそれまたそれよりも前だったか、記憶があやふやだ。

お互い大学生というちょっと大人な世界を堪能できるようになった年齢には到達してはいるが、やはり相変わらずだ。

その相変わらず何も変わらないのはいい事なのか、はたまた悪いことなのか、今の俺にはその判断をするのには少々渋る。

たわいのない会話にはあの頃と同じ時間が流れるかと思いきや、突然の提案に俺は先程頼んだばかりのジンジャーエールを吹き出しそうになった。

ただ運のいい事に店員に気を取られているせいで、俺の方には見向きもしない。

ここはその提案に乗るべきか否か、悩むところではある。

しれっとした顔でその提案について一言二言意見交わすと、相手は俺に向かってこうキッパリと言い放った。


「じゃあ、それで決定で」


この先どうなるかは、俺の運か……それとも向こうの運次第だろう。


喉を通ったジンジャーエールの炭酸が警報を鳴らすかのように弾け飛び、俺の中で生まれだしたモヤモヤに刺激を与えていく。


さて、これから俺はどうすればいいと焦る自分を隠して澄ました笑顔で相手に微笑んだのだった。