カトレアが通う大学の冬休みが始まり
まわりの生徒達は家族で共に過ごす年末だが
彼女は荒らされた家の片づけに追われていた。

「どうして俺が手伝わされてんだ…」

普段着用しているSP専用スーツを腕まくりし
テーブルや椅子を定位置に戻しながらボヤく柊。

「だって掃除の専門業者が危ない人かもしれないじゃないですか。
 もし何かを見つけられてしまったら困るでしょ?
 でも柊さんなら手掛かりが見つかっても安心ですし
 掃除も出来て一石二鳥」

掃除機の配線プラグをコンセントに差し込みながら
最もらしい説得をしているが、柊にはどうにも腑に落ちない。

「掃除もって…
 お嬢さん、上手く俺を利用していないか?」

「そう?これも全て遺産の為ですよ」

カトレアはニコッと悪魔の微笑みを浮かべ
『早く終わらせましょ』と手を動かす催促までする始末。

「あのなぁ、俺はアンタの護衛が仕事であって
 掃除屋じゃ――」

最後まで言い終わる前に掃除機の電源をオン。
けたたましい音でそれ以上の文句がかき消されていく。