その頃ーーー


「遺言書と10億の行方を黒谷が素直に白状するとは思えねーし
 お嬢さんも何も知らないとなると…
 手掛かりがなさすぎるな…」

カトレアと別れて
真っ暗な夜道をブツブツ呟きながら歩く柊の携帯電話に着信が入る。

相手はーーー


「お嬢さん…?」

家まで送り届けて
ついさっき別れたばかりなのに
さっそく電話が掛かってきた事に疑問を抱く。

「なんだ、どうした?」

"何か伝え忘れか"くらいに軽い気持ちで
通話ボタンを押したのだがーー

『柊さん…
 部屋の中が…』

「え…?」

『荒らされているんです…』

「・・はッ!?」

予想と全く違った返答に柊は驚愕したが
ふと頭を過ぎった悪い予感に
ハッと後ろを振り返った。

「今そっちに向かうから
 お嬢さんは隠れてろ!
 犯人がまだ近くにいるかもしれない!」

すぐにカトレアに忠告すると
慌てて来た道をUターンし走り出した。

黒谷を囮にしてカトレアを(おび)き出し
その間に家に入り込んだ黒谷の仲間が
まだ潜んでいる可能性を考えのだ。