カトレアは約束通り1人で父親を迎え入れ
そんな彼女の事が心配で仕方ない柊は
バレないように外の電柱の影から様子を見ている。

シオンもまた不安を抱きながら
複雑な想いで玄関のドアを見つめていた―――


「まさか遺産が地下にあったとはね。
 あの爺じゃ考えそうだ」

祖父の部屋に入り
カトレアが地下への扉を開けてる間
父親は高鳴る胸に心を弾ませながら
その時を待った。

そして…

「開きました…」

「よくやった、カトレア」

「ッ!?」

地下の扉を開けたと同時に
父親は隠し持っていた拳銃を取り出し
銃口の先をカトレアに向けたのだ。

「お父…さま」

いつ撃たれてもおかしくない状況で
一気に全身が凍りつく感覚に陥り
恐怖で金縛りのように動けなくなってしまったカトレアは、息を飲んで父親から視線を外す事も叶わない。

「罠がある事くらいわかっているからね。
 もしこの場に警察が入ってくれば
 カトレア、キミはここで死ぬだけ」

こうなる事はカトレアも予想はしていたが
それでも信じていた。