翌日、松本くんが登校してきたのは1時間目が終わってからだった。


それよりも前に学校には来ていたみたいだけれど、先生と話をしてこの時間から参加することになったみたいだ。


松本くんが教室へ入ってきた瞬間、教室内は水を打ったような静けさに包まれた。


みんなが意識して松本くんを見ないようにしているのがわかる。


異様な雰囲気が漂い始めたのを感じてあたしは泉と顔を見合せた。


「松本くんって、烈と一緒にいたって本当?」


ボソッとそんな声が聞こえてきて驚いて振り向いた。


誰もあたしに向かって話しかけたわけではなさそうだ。


じゃあ、どうしてそのことを知ってるんだろう。


「そうらしいよ。さっき先生と話してるの聞いた子がいるんだって」


ボソボソとした話声に納得した。


どんな所からでも噂はあっという間に広まってしまうものなのだと、怖くなった。


松本くんは周囲の反応なんて気にせず自分の席に座って教科書をしまい始めた。


頭に巻かれていた包帯も、頬のガーゼも取れている。


一見怪我はもう大丈夫そうに見えて安心した。


「烈と仲良くなったとか、ヤバイじゃん」


「ほんと、怖いよね」


「でもさ、それで学校に来なくなるなら別によくない?」


みんな好き勝手言っている。


けれどその声は以前の蔭口に比べるととても小さなものだった。


みんな烈の悪名は知っているから、関わりあいたくないのだろう。