***小春17歳、政宗23歳***


高校二年生の夏休み、小春は二度目の手術を受けた。
シクシクと痛む手術痕は小春の気分を下げていく。体に消えない傷がつくということがこれほどまでに自分の心を蝕むとは思わなかった。

体は元気なのに心は沈む。

そんな折、政宗が約束通りに顔を出した。
いつも通り颯爽としていて綺麗で格好いい。
小春の沈んだ心も浮き上がるようだった。

「小春、よく頑張ったね」

優しく微笑む政宗に、小春は不満顔になって口を尖らせた。

「それだけ?」

「すごい!偉い!天才!」

「……なんか嘘くさい。心がこもってないよ」

更に口を尖らせる小春に、政宗は苦笑した。

「褒めるのって難しいな」

「……じゃあ、頭撫でてほしい」

俯きながら控えめに言うと、政宗の気配を近くに感じて小春は少しだけ顔を上げる。政宗はベッド脇の来客用椅子ではなく、小春のいるベッドへ腰を下ろした。

急に距離が近くなって心臓がドキリと脈打つ。
自分でお願いしておきながら、緊張で体が強ばった。