***小春15歳、政宗21歳***


それは突然の提案だった。

いつもの定期検診で病院を訪れた小春は、何を言われているのか分からず固まった。
代わりに母親が疑問を口にする。

「手術、ですか?」

「そうです。小春ちゃんも14歳です。赤ちゃんの頃ではできなかった手術が、今ならリスクも低く受けることができます。一度考えてみてもいいかと思いますよ」

小春にとっては青天の霹靂だった。
このまま運動ができない、いつ発作が起きるとも限らない爆弾を抱えた体から解放されるかもしれないのだ。

手術を受けることで完治とまではいかないにしろ、それに近い状態になる。大空の下、思い切り走ることができるかもしれない。

それは小春にとって夢でもある。
いつか思い切り走ってみたい。
風を切るくらいに駆け抜けたい。

でも、走れなくても大丈夫。
運動ができないくらい何てことはない。
それ以外は普通の生活をおくれているのだから。

そう自分を納得させていたが、本当は運動のできない自分を疎ましく思っていた。