***小春25歳、政宗31歳***


長年の片想いがようやく実り、小春の毎日は幸せでいっぱいだった。
政宗は毎日おにぎりを買いに来てくれるし、メールや電話をする日も増えた。なかなか順調なお付き合いができていると思っていた。
今、この時までは。

「え、……嘘?」

おにぎり屋の前は国道が走っている。
それほど車通りが多いわけではないその国道で政宗の車が通りすぎたのを小春は目ざとく発見し、そして一瞬で奈落の底に落ちた気分になった。

政宗が助手席に女性を乗せているのを見てしまったからだ。小春と同じくらいの歳に見えたが、一体あれは誰なんだろうか。

情報が少な過ぎて、考えれば考えるほど不安が募る。一瞬しか見ていないのに、助手席の女性はきっと美人だろうとか、政宗にお似合いなのではといったネガティブな考えばかりが浮かんで、勝手に不安になり落ち込んだ。

そんな態度でいたので、仕事から帰ってきた実里が不思議に思って小春に声をかけた。