【松原麗華side】
私の姉が亡くなったのはもうだいぶ前。
確か私の14の誕生日の日。
なんでこの日を選んだのかは分からない。
たまたまなのか、私を恨んでいたからなのか。
今更疑問に思っても答えてくれる姉はもう居ない。
姉と私。
長女と次女の体は本当に弱く生まれてきた。
だからなのか両親は愛情込めて育ててくれたし、私もそれに文句はない。
姉は元々肺炎と筋肉の病気を併せ持って生まれてきた。
今の私にはないけど、体の酵素の突然変異によって発症する病気。
国の特定指定難病。
治療法なんてみつかってない。
投薬によって進行を遅らせることができるってだけだ。
…この病名、珍しいかもしれないね。
筋萎縮性側索硬化症。
通称ALS。
私が物心着いた時には既に姉妹揃って入院してたの覚えてる。
治療が嫌になった姉が泣き叫んでいたことも。
弱って死にたいって言ってたことも。
私が抱えてる病気とは違う辛さを味わってる姉の力になりたくて毎日点滴を引きながら姉のところに行ったのを覚えてる。
私は多少の発作なら我慢できるし、病気よりも姉を優先にしてたから。
…私の病気の辛さより姉の辛さの方が大きいから。
私の病気。
聞いたことがある人が殆どじゃないかな。
血液のガンって言われてる白血病。
生まれつきかかってる心臓病。
そして肺炎。
その肺炎から来る喘息。
私の体も弱いってことから家族性ALSを疑われてたけど今の私にそんな症状はない。
でも発症しないとも言えない。
私の体には何度もメスをいれられた跡がある。
病弱が故に学校にもまともに通えず。
ずっと保健室で登校して。
友達とまともに遊ぶ事もできない体。
大学に通ってた頃はよく同じ友達とカラオケに入り浸って充実してた方だと思う。
大学に通うって言った時の両親の心配の声が未だに思い出せる。
カラオケに行って初めて歌が好きだって気持ちが芽生えて。
週4くらいでいってたっけ。
「…麗華、お姉ちゃんもう我慢できないや。」
姉が自殺する数日前にした会話。
「お姉ちゃんね、頑張ったけどもう精神が頑張れないんだ。
だって治っても友達もいなくて教養も全くない。
将来に希望を見いだせないんだもん。」
私はまだ学校に通えていたけどお姉ちゃんはずっと院内学級だったから。
生きる希望を本当に見つけられなかったんだと思う。
でもそれは私だって同じ。
なんとなく治療受けて何となく学校に行って。
夢を見つけられたらいいなあなんて思いながら諦めて挫折を繰り返して。