【松原麗華side】
将斗くんとお付き合いを初めて1ヶ月と少し。
ついにやらかしてしまった。
いや、いつかはする自信があったんだけど。
…はい、喧嘩しました。
本当に些細なことで。
今日は大晦日。
大分前に“大晦日の日、バイト終わったら会おう”って言われて、本日まで覚えてた。
覚えてたのは覚えてたんだけど…
まさか本当に会うとは思わないじゃん。
友達が私の家で呑んでるから酒パーティってなってるけど。
『酒パーティなう』
『なら今日は無しなんやな』
『会うって言ってたやつ?』
『忘れてたならいいよ。』
『覚えてるよ?』
『別にいい。』
…怒らせてしまった…
忘れてないって言ってるのに…
しかも何も進展ないまま将斗くんバイト行っちゃうし…
「麗華呑まないの?」
「…うん、今日はジュースにする」
もしかしたら会えるかもしれないから。
怒らせたならちゃんとあって謝りたい。
『きょう会えやんのやんな?』
…23時少し前。
バイトが終わったのか連絡が来た。
『今から?』
『うん』
『会えるよ。』
『酒飲んでないん?』
『うん。』
のんでなくてよかった。
本当にそう思った。
…でも、怒ってるよね…
私が怒らせた。
怒らせるつもりなんてなかったのに…
「…気になるなら会いに行けばいいじゃん」
ぐびぐび飲んでいる友達が携帯の画面を覗き込みながら一言。
「行って謝って一緒に年越ししてきなよ。」
…元々一緒に年越ししたいね、とは言ってて。
今日こんな喧嘩すると思ってなくて。
会えるなら、会いたい。
どうしても。
「お母さんっ!」
「うわっ…びっくりした、どうした?」
「…将斗くんに…会いに行ってきてもいい?
…一緒に年越しして新年迎えたい…」
現在の時刻は23時。
いつもなら外出できない時間だ。
「うん、いいよ。」
「え?」
「いや、むしろ行かないのかなあって思ってた。」
「?」
「年末出かけるーって言ってたくせになかなか出ていかないなあって思って。
喧嘩でもしたんか?とは薄々感じてたよ。」
…流石と言うべきかなんなのか…
「…お父さん」
「ん?」
「将斗くんのところ…」
「行ってこい。」
「本当?!」
お父さんの性格上絶対だめって言うのに…
「あんまり遅くならないようにな。」
「…うんっ…」
「今まで入院して年越ししてたろ。
だから彼氏が出来たなら家族とじゃなくて大切な人と迎えなさい。
いなかったら家族で過ごせばいいだけの話なんだから。」
お父さん…
ここまで優しいお父さんを見るのは初めてかもしれない。