【松原麗華side】
「よっ」
仕事終わり。
私はいつも通り終わらせタイムカードを押し、車に乗り込んで普通に家まで帰ってきた。
まったりゆっくりお風呂に入っていたんだ。
「…」
なのに。
「あれ?ガン無視?」
なんでいるのかな?将斗くん?
「ごめん、会いたくてきちゃった。」
確かに。
普通に家まで送り迎えしてもらってるけど。
まさかこの時間に来るとは思ってないじゃん。
「…麗華?お友達?」
玄関でフリーズして固まった私の背後から声をかけてくるのは間違いなく私のお母さん。
…しかたない、か。
「違う、彼氏。
…とりあえず、上がりなよ。」
「いい?お邪魔します!」
急に来ちゃったものは仕方ない。
故に私が部屋着なのも仕方の無いこと。
来るって聞いてたらもっとお洒落してたのに。
「あれっ、お姉ちゃん、彼氏?」
「そう。」
「へえ…」
…どこに通そうか。
どこに通しても私の家族がいる以上、困った…
「麗華、とりあえず部屋行ってもらおうか。」
「…そうする。何かあったら呼んで。」
母の言葉に頷いて私は将斗くんを自分の部屋に通すことにした。
…散らかってはないけど片付いてもない。
一応…普通の部屋。
「うーん、麗華の匂いだっ!」
「変態か?」
「ごめん、違う」
クッションを手渡し私は普通に座ることにした。
将斗くんも適当な位置でクッションを抱いて座る。
「…何か用でもあった?」
「……んー、用って訳ではなんだけど…」
何かあったのかな。
「会いたくて。」
違うよなあ…
今まで普通に会いたいとは言ってても直接来ることはなかった子だから。
「…本当は?」
顔を覗き込むようにして視線を合わせる。
「…」
何かあったのはわかるけど、何か、まではわからない。
私と将斗くんの付き合いも気づけば1ヶ月。
長いような短いような。
しばらく見ていたが変わりないので私はため息をついて本棚から本を取り出す。
将斗くんは立ち上がって私の横に座り直した。
「…構ってよ…」
あれ、この子こんなに甘えキャラだっけ?
隣に来てくっつきに来た将斗くん。
「ねえ、寂しい」
「どしたの今日。」
文庫版から目を離して私は将斗くんの顔を掴む。
そのまま顔を合わせること数秒。
「…麗華、いい匂いする」
「……お風呂上がりだからね。」
そりゃお風呂入ったあとだもん。
仕事でつけてるような香水の香りはしないはずだ。
「…しかも今すっぴん?」
「お風呂入ってたからね。」
「…いつものメイクしてるところや、仕事の時のスタイルも好きだけど、俺は自然体の麗華が一番好き。」