ケータイ小説 野いちご

恋をしたのは

高校一年生
秋、いつか思い出に変わるまで

 相も変わらずにフルフルと震える私の手を誰にも気づかれないようにそっと握ってくれる加瀬くん。
 バックステージで前のバンドを待つ間、ほんの10分足らずなのに、手足の震えはいつも以上。
 異常なほどに喉が渇いてくる。
 ネガティブな自分が囁く。
 自信なんてない、うまくやれなかったらどうしよう、失敗しちゃったらどうすんの? 不安ばかりが積もる。
 その原因は全て自分自身のせいだ。

 ……3日前の練習からずっと腱鞘炎のような状態で手首が痛い。
 周から貰ったリストバンドの下に湿布を貼ったおかげで何とか保っているけれど。

 家でも自主練していたせいもあると思う。
 だけどこの4人で全国大会行きたい、どうしても。
 枠は一つ、20校中1位にならないと行けないのだから。

「海音、終わったらご褒美何がいい?」

 周やアオイくんに気づかれないような小声で。
 そっと加瀬くんを見たら私を落ち着かせようと微笑んでいた。

「またケーキが食べたいっ」

 ちっちゃな私の返事も加瀬くんに届いて笑顔で何度も頷いてくれて。

「アオイ、周、円陣組むよ」

 私たちに背を向けて前に立ってた二人に声をかける。

「やれるな、きっと」
「やるしかねえだろ」

 ステージから漏れてくる光に反射し輝いている新しいギターを持った周がニヤリと笑う。

「海音ちゃんは?!」

 何だか心配そうなアオイくん、きっと私の顔がまだ不安モードなんだ。
 気合いを入れ直して大丈夫と頷いたら。

「なら、イケるね!」

 4人で円陣を組んで、お互いの顔を見まわした。
 視線で互いにエールを送り合って。

「今までで一番いい演奏するぞ、絶対!!」
「おーっ!!!」

 士気を高めた。

「15番西部地区代表 Na na na TAM’sです」

 そのアナウンスに促されてステージへと上がる。
 大丈夫、きっと、やれる。
 私を振り返り、いつものようにピースサインで笑顔をくれる加瀬くんに。
 今までで最高のドラムを叩こうって誓った。


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